【先日、ウチの娘が】~初遠征編~ by neo
このブログは、私の愛娘(長女:9歳、次女:6歳)についての他愛のない日常を不定期に綴る、仕事や技術的な話とは全く無縁の完全に自己満足な日記です。知り合いから子供の成長とか運動会とかのビデオ動画を延々と見せられてイラっとした記憶があるといった方は、閲覧をご遠慮されることをオススメします。
先日、ウチの娘(長女:リコーダーの下の”ド”に苦戦中)が
「クラスの友だちと、あした学校であそぶやくそくしたー」
と言いました。
その日は金曜日の夜ということもあり、ソファでダラダラしていた私は「あれ?学校で遊ぶ約束って、初めてかな?」と思い、嫁に尋ねました。
「もしかして、初遠征かな?」
「そうだね。活動範囲が広がったからね」
私の住んでいる地域の小学校では、子供だけで活動できる範囲(距離)が学年ごとに決められています。
我が家は学区の端っこに位置しているため、二年生までは休みの日に、子供だけで小学校に行くことができませんでした(毎日歩いて登校していますが、遊びに行くのはダメみたいです)。
娘(長女)曰く、三年生になり自転車で小学校まで行けるようになったため、早速約束を取り付けてきたとのこと。
「明日は特に予定もないから、遊びに行ってもいいよ」
「やったー!」
「やったー!」
ママの許可に、大喜びする娘(長女)。
一緒に行く気満々で、ぬか喜びする娘(次女)。
私は勘違いする娘(次女)の説得を嫁に押し付け頼み、娘(長女)に聞いてみました。
「ところで、誰と遊ぶの?」
「わかんない」
「え?」
あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!
「誰かと遊ぶ約束をしてきたのに、誰と遊ぶのか分からない」
な…何を言っているのか わからねーと思うが
おれも 何を言われたのか わからなかった…
頭がどうにかなりそうだった… 勘違いだとか聞き間違いだとか
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ……
あのフランス人もビックリです。
「さっちゃんも行ぎだいっ!!」と大泣きの娘(次女)を説得していた嫁も、思わずこちらの会話に戻ってきました。
(ちなみに次女は自分のことを「さっちゃん」と言います。参考まで)
「クラスのお友達と約束したんでしょ?」
「したよー」
「なのに、誰と遊ぶのか分からないの?」
「うん」
「…それって、他の子にも見える友達か?その友達は、足が透けてたりしてないか?何か悩みとかないか?この指は何本に見えるッ!!」
「だからー、やくそくはしたんだけどー、だれが来れるかわかんないから、だれと遊ぶのかわかんないんだよー」
なるほど、娘(長女)と同様に、他の子どもたちも初遠征なのかもしれません。
家庭によっては許可が下りない可能性もあるため、「約束はしたものの、現状では誰と遊ぶのか分からん」ということのようです。
「来れる人は、おひるの1時に学校にあつまろー、ってやくそくしたんだよー」
「なんだ、そういうことか。早く言えっての」
「そう言ったよー。だけど、パパはわけわかんないし」
「なんだとッ!パパはわけわかんなくなど、ないッ!」
「今度、お友達のお母さんたちの連絡先、ママ聞いとくわ」
「ありがとー。まー、きっとみんな来れるよー!すっごいたのしみー!」
「それじゃあ本当に悩みとかないんだな?この指は何本だ?」
「だから、ないってばー。3本だよー」
嬉しそうに明日の準備を始める娘(長女)を見て、とりあえず一安心……と安堵しかけた私は、重大なことに気づきました。
もし…もし誰も…お友達が来れなかったら……あの子を独りぼっちにさせても良いのか?
広い校庭の片隅で、独りぼっちで乗るブランコ……あの子の背中を押してやらなくて良いのか?
トボトボと家に帰り「だれもこなかったよー、えへへー」と……あの子の寂しそうな笑顔を見せられても良いのか?
・・・良いわけがないッ!!
「よしッ!明日に備えて、今日は早めに寝るぞッ!」
「…ホント、心配性だよね」
全てを悟ったかのような嫁のセリフを無視し、私はその夜、早々にベッドに潜り込んだのでありました。
~翌日~
「いってきまーす!」
「いってらー」
水筒、おやつ、タオルなどが入ったリュックを背負い、娘(長女)は自転車に乗って元気に出掛けて行きました。
今日はとても良いお天気です。
~10分後~
「…よし、行くぞッ!」
「いまだけはんがくー!」
「まだ早いでしょ。下手したら追い付くよ?」
「そ、そっか…」
~20分後~
「…そろそろ行くぞッ!」
「いまだけはんがくー!」
「まだ13時になってないじゃん。みんな集まってないと思うよ?」
「そう…だね」
~30分後~
「…今すぐ行くぞッ!靴を履けいッ!」
「はんがくってなにー?」
「分かったってば。慌てなくても大丈夫でしょうが」
というわけで、私は嫁と娘(次女)と車で学校にやってきました。
娘(長女)にバレないように少し離れたところに車を停め、私は車を降ります。
「マックにポテトを食べに行く途中だから!ぐ、偶然、学校の前を通っただけなんだから!わ、わざわざ見に来たんじゃないからね!」という、万が一見つかってしまった場合の言い逃れも、バッチリ考えてあります。
「なんか、アタシも見たくなってきたかも」
「さっちゃんもー!」
「ほれ見たことかッ!ならば『覚悟』して着いて来いッ!決して見つかるんじゃあないぞッ!」
「声大きいって。ちなみに、誰も来てなかったらどうすんの?」
「パパが遊ぶッ!パパにはその『覚悟』があるッ!」
「分かったから。声大きいから」
「『覚悟』とは…犠牲の心ではないッ!『覚悟』とは!!暗闇の荒野に!!進むべき道を切り開くことだッ!」
「いい加減にして!見つかっちゃうでしょ!!」
私は正門に向かいながら祈りました。
あの子が、独りぼっちではありませんように。
あの子の、背中を誰かが押してくれますように。
あの子の、楽しそうな笑顔が見られますように。
……神よ、どうかあの子を、お救いください……!
「…つぎはブランコしよー!!」
聞こえてきた娘(長女)の声に、私は目を見開きました。
そこに、お友達はいました(3人)。
みんな、笑顔でした。
願いは神に、届いたのです。
「なんだかんだ言って、やっぱ見に来て良かったかも。アタシも内心、心配だったから」
今にも飛び出して行きそうな娘(次女)を抑えながら、嫁が言いました。
「スピードワゴンはクールに去るぜ」
「香ばしいポーズとかとらなくていいから。ほら、マック行くよ」
「まっくのぽてとー!いまだけはんがくー!」
楽しそうな娘(長女)とその友達の声を背中に受け、ポテトで買収した次女に連れられて、私はクールに車に戻るのでありました。